2009年12月12日 (土)

行動科学

私の神経科学の研究は、分子生物学から始まって、分子遺伝学、解剖学、生理学、とやっていたわけですが、「なんか違うなー」と思っていました。情報処理や言語学も囓ってみましたが、ピンときませんでした。心理学にも接近しようとしましたが、どこから入ったらいいかよくわかりませんでした。精神医学に移ったのも試行錯誤の一つです。

そうこうしながら、行動科学にようやくたどりつきました。今はこの本

行動分析学入門 Book 行動分析学入門

著者:杉山 尚子,島宗理,佐藤方哉,リチャード・W. マロット,アリア・E・マロット
販売元:産業図書
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を読んでいますが、久しく味わったことのないような楽しみを覚えています。たくさんの例が挙げられており、障害者施設や精神科病棟での問題行動がかなりの割合を占めています。これは非常にありがたいです。私がこの本を読む行動が強化されているのは

問題行動にどう対処していいかわからない→「行動分析学入門」を読む→問題行動に対する解決のアイデアが出てくる

というふうにも説明できます。

行動科学がフィットしている理由としては、プラグマティズムだと思います。基礎と臨床が同じシンプルな論理の上に乗っており、そのためハトの振る舞いから組織の有りようまで同じコトバで説明できるというのは、きわめてパワフルだと思います。

逆に、認知科学に対してずっと距離を感じていたのも、さまざまな中間的な概念(仮説的構成概念)を持ち出しているのに気持ち悪さ(注)を感じていたのだ、と納得できました。

(注)新しい概念を持ち出すと、格好良く見えたりしますが、より複雑になって問題の所在が見えにくくなってしまうことが往々にしてあります。リーマンショックの主要な原因として、非常に複雑な金融商品が開発され、リスクの所在が見えにくくなったことが挙げられているのに似ています。

行動療法が基礎を置いているのは学習理論です。学習は最終的にはシナプス可塑性で説明できるはずです。思えば私の大学院のお師匠さんも「アウトプットに近い方がいい」と言って小脳や大脳皮質の研究にシフトしてこられたのでした。

認知を扱わないままだと極端に幅が狭くなってしまう(エビデンスがあるのは発達障害児の指導と強迫性障害くらい)ので、いずれは認知を扱うことになると思います。それでも、やはり行動療法をしっかり学んでいた方が、厚みが出るというか、応用が利くというか、そんな御利益があるように思われます。

今日はこんな本を仕入れてきました。

【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ Book 【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ

著者:スティーブン P.ロビンス
販売元:ダイヤモンド社
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世界一読まれている組織行動学の教科書とのふれこみです。500ページ近くある分厚い本ですが、面白そうです。

自分の進む道のぼんやりしたイメージが、徐々に具体的な形を取ってきているのがとてもうれしい今日この頃です。

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2009年12月 6日 (日)

行動療法・行動分析

うつ病の認知療法に対する興味から心理療法の勉強を始めてきたのですが、認知行動療法から行動療法寄りの話(北海道医療大学の坂野先生、関西学院大学の米山先生)を聴いていくうちに、関心が行動療法にシフトしてきたのでした。

現実的に、私が勤めている単科の精神病院では認知機能が落ちている人が大半なので、認知療法よりも行動療法の方が役に立ちそうなのです。たとえば、必要ない注射をしてくれとせがんでくる(泣きわめく)患者さんがいますが、どうやったらそうした問題行動を減らせるか、あるいは、薬をきちんと管理して飲んでもらうためにはどうするか、といった問題に解決を与えてくれそうなのです。

「行動」というのは内面で起こったこと(思考、イメージ、感情)も含みます。「死人にはできないこと」という人を食った定義もあるそうです。

で、ここ3週間くらいで読んできた順に挙げてみます。

方法としての行動療法 Book 方法としての行動療法

著者:山上 敏子
販売元:金剛出版
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行動療法の日本の大家といえばこの人です。3年前、大学で指導医の先生にも山上先生の本を読むよう勧められた(そのときはずばり「行動療法」という名の本)のですが、全然、ピンと来ませんでした。

山上先生によると、行動療法というのは方法の体系であり、必要に応じて適切な方法を臨機応変に利用するのが臨床の場での治療である、とのことです。これは、私の感覚に非常にフィットしました。

この本で、行動療法の入り口として行動分析からスタートするのを勧めていたので、次の本を買ってきました。

臨床行動分析のABC Book 臨床行動分析のABC

著者:松見 淳子,ユーナス ランメロ,ニコラス トールネケ
販売元:日本評論社
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表紙がきれいで中身も面白かったです。だいぶ臨床寄りで、最近流行のACT(アクセプタンス&コミットメント セラピー)の導入という感じもしました。ただ、もうちょっと基礎を勉強しないとな、という気もしました。

ご丁寧にも訳者によるあとがきに、「行動分析あるいは行動療法それ自体の入門書としては、以下に挙げた書籍のすべてを列挙した順に当たられることをお勧めします」と書いてあり、次の4冊が挙げられていたので、それに従ってみることにしました。

1)小野浩一「行動の基礎-豊かな人間理解のために」

2)山上敏子「方法としての行動療法」

3)杉山尚子等「行動分析学入門」

4)レイモンド・G・ミルテンバーガー「行動変容法入門」

 行動の基礎 豊かな人間理解のために 行動の基礎 豊かな人間理解のために
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

レスポンデント条件付けとオペラント条件付けが中心ですが、動物実験の話が多くて、心理学の実験はこうやって組むのか、というのがわかりました。研究者時代に行動実験の論文はそこそこ読んでいたはずですが、その基礎が今になって理解できたのでした。

2)は先に読んでいて、あとは3)の要約ともいうべき

 行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由 行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

もさらっと読みました。勉強しようというモチベーションを高めてくれるいいイントロダクションです。

行動分析は狭義の治療だけでなく、仕事のパフォーマンスを上げることなども対象にしています。そうなると、社会行動や経営といったものまで含まれることになります。ますます面白そうです。

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2009年11月13日 (金)

簿記の勉強

ここ数回、認知行動療法のエントリが多かったのですが、実は主に取り組んでいたのは簿記3級の試験に向けての勉強でした。試験は11月15日でまだなのですが、3回の過去問で合格点をクリアできていたので、いちおうクリアしたと自分の中では思っています。

発想は単純で、何をするにしてもお金の動き方を知らないと始まらない、それなら一番の基本から、という考えで、今年の(唯一の)目標として挙げていました。

9月初旬から開始して2ヶ月間、テキストと問題集をコツコツやっていました。ゼロから「掛け」とか「為替」とか数十個の勘定の意味を覚え、文字通り手を動かしながら勘定の動かし方を覚えたのでした。感じとしては、中学入試の算数に似ている気がします。

「一番、簡単な試験だから」と高を括っていたのですが、どっこい意外と手強くて、マスターするまでイライラしました。できるようになると、複式簿記の仕組みがなんとなく見えてきました。「人間が生んだ最も偉大な発明の一つ」という言葉はまだまだピンと来ませんが。

簿記2級だと工業簿記も含むのでやる気はありませんが、財務諸表を読めるようになること、多少は経営分析もできるようになること、を目指したいと思います。大変そうですが。。。

(付記)11月15日、試験終わりました。自己採点では100点中96点でした。ひねった問題はわずかで、配点の大きい第3問の残高試算表や第5問の精算表は解きやすかったと思います。

2級も取ってやろうかと少し色気も出てきました。。。

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2009年11月 7日 (土)

なぜ認知行動療法に興味を持っているか?

流行だから、というのは否定できませんが・・・

今まで読んだ論文の中で最も印象に残っているのは、、大学院2年目に出会った Michael Merznich Paula Tallal の論文でした。これは、言語学習障害の原因は子音の弁別が困難である(たとえばbaとpaの区別が困難)ことだと突き止め、コンピュータゲームを用いたトレーニング(学習)で改善しようという試みです(注1)。研究室の文献紹介でこの論文を取り上げたとき、予想もしなかったほどすごくウケたのを覚えています。

その理由として、神経可塑性の応用についての好例であること、コンピュータゲームに興じながら学習を進めている子どもたちの映像のインパクトがすごいこと、の二点にあると思っていました。(その動画はSupporting Online Materialにありましたが、残念ながら今は削除されてしまっています。プログラムのデモ版はこちらのサイトのDemoというタブにあります)

今日、行動療法の研修会に参加し、見過ごしていた点にようやく気づきました。

表面的には楽しくコンピュータゲームに取り組んでいるように見えるのですが、実際には学習理論に基づく行動療法そのものなのでした。思い起こせば、易しい課題からスタートして、正解率があるレベルに達したらもう少し難しくする(スモールステップの法則)、正答したら得点が増えていく・かわいらしいキャラクターを出す、など報酬を与える、といった手法をしっかり使っています。

精神科でよく言われている Bio-Psycho-Socialという三つのレベルで整理すると、脳の可塑性--(認知)行動療法による学習・再学習--生活上の困難の克服・社会への適応、となります(注2)。今思うと、その3つのレベルを結ぶ試みとして、非常にエキサイティングに感じたのだと思います。(認知)行動療法一般についても、全く同じことがいえるのです。

こうして、11年前(注3)に出会った論文の面白さと、現在、興味を持って学んでいることがつながったのでした。

私は心理学はずぶの素人ですが、さまざまな学習についてシナプス・神経回路レベルで想像(妄想?)することはできます。より効果的な方法を編み出せるかもしれません。ワクワクしますね。

遺伝子で決まっています、という話もクリアカットでいいけれども、人生をいい方に変えられるんだという方が、私には夢があっていいですね。

(注1)学習の話はMerznichの論文のポイントでした。

一方、Tallalの論文のポイントは子音の弁別の問題です。言語学習障害という、一見、高次機能の障害に思えるものが、子音の弁別という、比較的、低次の問題(せいぜい二次聴覚野?)に帰着できる、というのです。

baとpaの弁別というと、ソシュールの言語理論を思い出しますね。日本人なら、rとlの弁別が問題かな?

(注2)今年度に入って心理療法に興味を持ちはじめたのは、Bio-Psycho-Social でいえばBio-にあたる薬の使い方が、4年目にして大まかに掴めたからかもしれません。あいかわらず、単純なコトからより複雑なコトに興味が移りつつも、ジャンプはできない私です。

(注3)そのころ私が大学院で取り組んでいた(そして手が届かなかった)研究は、私が始めてから12年後の今年、nature article & letter として別のグループから発表されました。やはり4,5年では無理なテーマでした。

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2009年10月31日 (土)

滋賀CBT研修会 坂野雄二先生

認知行動療法の研修会に行ってきました。講師は北海道医療大学の坂野雄二先生です。

坂野先生は認知療法学会でもユニークな座長ぶりを拝見しており、期待していました。内容は期待に違わぬものでした。

まずは心理学の歴史のお話が1時間。フロイト、パブロフ、ワトソン、スキナーからアイゼンク、ウォルピ、そして認知療法の創始者であるベックに至る流れを紹介されました。そのココロは、精神分析が実践で効果を挙げられないところから認知行動療法が考案されたということでした。

その後は実践にあたって、治療者が注意すべきこと、重視すべきことに重点を置いて説明され、その合間に「認知行動療法(CBT)とは」という話をされていました。なので、系統的には説明しにくいのですが、重点を置いて話されたことを挙げていくと

・推測や解釈はなるべく排する。「どうしてこうなったんでしょうか?」→「良くなってから考えましょう」

・生活・行動に着目しよう。

・一つの振る舞いだと思えるもの(例:朝起きて散歩する)も小さな行動の複合であることを認識する

→服薬行動の管理へのヒント

・CBTに限らず、精神療法は導入が肝心。主訴・クライアントの希望、および問題のアセスメントを充分に行い、近い治療目標を設定する。

・行動分析の理解

きっかけ→振る舞いや考え→その結果

患者さんは「きっかけ」と「結末」は自発的には語らない。治療者が聞き出す。

・学習(この人はあと何を学べばよいか?):悪い点をなくすのでなく、良いところを積極的に増やしていこう

例:爪を噛まない→爪を噛まない時間をどうしたら増やせるか?

・問題解決の着眼点

#どこから変えると変えやすいか

#どこを変えると次の問題を解決しやすいか

(難しいところから始めることはない)

・上手なプラスのフィードバック:

その場でほめる、余計な言葉は言わない、具体的な行動をほめる、できなかった理由は問わない、「・・・しちゃダメ」と通用しない

・問題解決のヒント

☆たくさんのアイデアの中に良いアイデアがある=柔軟性を増やす☆ 《今日のいちばんのポイント》

(できそうなことを考えるとアイデアが出ない)

今までとは別のアイデア・行動ができたことに対して、プラスのフィードバックをする

・学んだことを安定させるためには「過剰学習」が必要

身に付いた後も繰り返し練習が必要

・患者さんが感情をぶつけてきたときは、個性を理解するスタートとなる

例:おい、こら、看護師!この病院は、どうしてこうなんだ!

先生のこと好きになっちゃった→今までどんなとき、どんな相手を好きになってましたか?

・境界型パーソナリティ障害について

患者さんは自分なりにベストを尽くそうといている・・・やり方が下手なだけ

弁証法的行動療法(DBT)が注目されている。(DBTの話は時間切れ)

以上が講義のアウトラインです。

「認知行動療法、イコール、カラム法ではない。患者さんに合わせて手法を組み合わせていく楽しみがある」と強調しておられました。浅薄な理解・利用に対する当然の戒めでしょう。

実践家である先生の生き生きした話を聴いていると、上手くいっていない問題にどう適応したらいいかと、いろいろと頭に浮かんできます。私は精神科病院に勤めているので、病棟で起こる問題、たとえばイライラしてスタッフや他の患者さんに当たる患者さんの対応や、入院が長期に及んで問題行動が出現している患者さん(物盗り、放尿、大声出し、など)の対応が思い浮かびました。

興奮して暴力が出たり出そうになったりすると、「頓服を飲むか、注射をするか、保護室に入るか」という選択肢でつい考えてしまいますが、もっと柔軟に考えなければいけないと感じさせられました。

柔軟さを身につけるコツを教わろうと思いましたが、時間が足りず質問できませんでした。「繰り返し練習すること」という答えが返ってきそうですが。

私はほとんど心理学を囓っていないので新鮮なことばかりでした。こういう経験を勉強するきっかけにできれば、と思います。

来週は応用行動分析の話を聴きに行きます。

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2009年10月23日 (金)

家の近くで食事に行くところ

自分の備忘録を兼ねて整理してみました。

1)Bimota (寺町今出川角)

Bimota Bimota2

コストパフォーマンスの高い洋食屋さん。650円で写真のような定食が出てくる。注文してからハンバーグを焼いてくれたりして、できたてを食べられる。写真は以下のブログからお借りしました。

http://kyotobimiclub.com/index/youshoku6.html

http://masaki527.blog53.fc2.com/blog-entry-336.html

2)なかじま食堂 (河原町今出川下ル一筋目西入ル)

昔ながらの食堂・弁当屋さん。ずいぶん昔からあるらしい。

ここの売りは煮物。大根、ナス、にんじん、ジャガイモなどを煮込んだのがすごくホッとする味です。

3)新福菜館 (府立医大前)

京都では有名なラーメン屋さん。スープが黒っぽいがそんなに塩辛いわけではない。焦がし醤油か?

4)麺や高倉二条・ろおじ (高倉二条と百万遍)

つけ麺屋さん。麺は全粒粉で、ラーメンというより蕎麦に近い食感が新鮮。最後につけ汁に足してもらう出汁が、魚介のうまみが効いていて二度、楽しめます。

高倉二条は並んでいることが多いですが、クオリティーもいいと思います。

5)アオゾラ (百万遍)

タイカレー。カレーがどろっとしていて、ココナッツミルクが効いていて美味しい。一回目に行ったときはご飯に水気が多くべっちょりしていたが、二回目はそんなことはなかった。

6)華祥 (百万遍)

庶民的な中華料理屋だが、味は一級品。まだあんかけ焼きそばと水餃子しか食べてないので、これから開発します。

7)燕燕 (寺町今出川)

中華つながりで。ここも美味しく、値段も安い(ビール込みで二人で6000円以下)。平日夜でも予約しないと席がないことも。

8)まんじぇびゃん (荒神口)

イタリア料理。パスタを食べたいときに行く。味はまずまず。店は狭いなぁ。

9)フィガロ (河原町丸太町)

イタリア料理ついでに。ちょっと贅沢したい日曜日のランチに。味は相変わらず良いが、竜円シェフがいなくなってメニューはややマンネリ化しているような気もする。

10)久保田北店 (河原町丸太町)

つけ麺専門。今日、担々つけ麺を食べてきました。麺は普通、つけ汁はゴマが効いていて濃厚でした。悪くないと思いますが、人が並ぶほどでは?と思いました。

他にありましたら教えてください。

河原町今出川まん

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2009年10月19日 (月)

認知療法の講義録

ぼちぼち認知療法をやり始めています。

いまさらながら、今年の7月に参加した井上和臣先生の講義録およびツール(日常生活表、思考記録表)を打ち込んだので、アップします。

「井上先生講義録20090725」をダウンロード

「日常記録表」をダウンロード

「思考記録表」をダウンロード

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2009年10月16日 (金)

認知&行動療法学会の報告

学会に行ってきました。出張報告を書いたので、そのままアップします。

9回日本認知療法学会・第35回日本行動療法学会 (2009101112日 幕張メッセ)

1)なぜこの学会に参加したのか?

 うつ病や神経症は、薬物療法だけでは効果が不十分だったり、再発を防ぐためには服薬を続けなければ再燃・再発するケースが多いことを、普段の診療で実感している。

 うつ病や神経症に対して最もエビデンスがある心理療法は認知行動療法(CBT)であるため、私は今年度から勉強会や研修会に参加し始めている。その一環として、共同開催された上記の学会に参加することを決めた。

2)参加したプログラムについて

a) シンポジウム 「認知行動療法を日本に普及するにはどうすれば良いのか?英国のモデルから」

英国では、CBTは薬物療法とならぶ有効な治療法と認められている(その一部は今年のNHKでも放送されていた)。英国におけるCBTの現状、およびそれを参考にした日本での取り組みが紹介された。

サルコフスキス氏は英国におけるCBTの現状を報告された。エビデンスを集め、予算を獲得し、心理士を養成するシステムを作り、さらにエビデンスを集める、というシステマティックな取り組みを紹介された。また、CBTの経済的な治療対効果をはっきり数字で紹介されていた。”In the end, money drives everything.”という言葉が印象的であった。

大野裕氏からは、CBTを日本の医療現場へ導入する試みが報告された。エビデンス、診療報酬化、トレーニングについて具体的な話をされた。日本では臨床心理士が国家資格となっていないため、最初は医師による治療となるとの見通しであった。研修案はかなり具体的であり、ぜひ早めに情報をキャッチし研修を受けたい。

b) ミート・ザ・エキスパート 遊佐安一郎先生

 臨床心理士として、アメリカおよび日本の精神病院で活躍されてきた先生である。患者さんに寄り添うことの大事さ、患者さんをシステム(家族システム、治療システム、身体システム、など)の中で捉える視点を紹介された。システムの中でCBTは心理システムの意識的な領域に働きかけるものであるとされ、それ以外のシステムに働きかけるものとして、精神分析、家族療法、DBTなどにも言及された。

 エビデンスも大事だが、良くなる人が半分ということは、良くならない人も半分いるということであり、良くならない方にはいろんなアプローチが必要である、というお話もあり、種々の手法を学ぶ大切さを感じた。

c) ミート・ザ・エキスパート 原井宏明先生 「行動・認知療法とパフォーマンスマネージメント」

 強迫性障害の行動療法の日本での第一人者である。座長の先生も巻き込んで、非常に挑発的な内容であった。

 10年以上に渡るご自身の治療成績(治療した人数、改善度、治療期間)、および取り入れてきた手法を紹介された。基本はY-BOCSによる評価と曝露反応妨害法であり、効率よくするために動機付け面接、ACTなど取り入れてこられた。

 入り口(診断、重症度の判定)、出口(アウトカムの判定、外部のベンチマークとの比較)はぶれない、という姿勢は、普段、そういうことをあまり意識せず臨床を行っているものとしては反省させられた。自分が行ったことを記録し、データとして残す必要を強く感じた。

d) シンポジウム “CBT for psychosis”

 統合失調症の陽性症状・認知機能低下に対するアプローチとしてCBTを取り入れる試みが紹介された。これまでの取り組みをCBT的に捉え治すという程度で、残念ながら興味は持てなかった。

e) ケーススタディ 太田滋春先生 「CBTを軸としたストレス性疾患専門治療デイケアの試み」 

 札幌にある中江病院の心理士の方によるデイケアの試みである。通常、CBT1対1で、週11時間程度の面接という枠組みであるが、それをデイケアに拡張することで、グループで、なおかつホームワークを実践する時間と場の提供を期待している。復職デイケアよりも重度の感情障害を対象にしているという。

 週1回、午前中はグループでCBT、午後はOTをしながらCBTも交えていく、といプログラムである。心理療法とOTの(意識した)コラボレーションという面白い取り組みであり、また、漫然と続けるのでなく、アセスメントをしながら改善を試みておられる様子がうかがえた。

3)全体の感想

a) 本で読むよりも生の声を聞いた方が圧倒的に印象に残り、次につなげていこうというモチベーションとなった。

b) CBTはもちろん、それ以外の心理療法もたくさん言及されており、興味が広がった。

c) 自分が行っている診療を振り返り、客観視するために、面倒ではあるが、評価尺度を使う、データを整理する、症例報告を書く、などの必要性を感じた。

d) やはりCBTは有力な手法である。少しずつ始めており、勉強会でスーパーバイズを受けたり、研修会に参加したりして身につけていきたい。

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2009年9月22日 (火)

お金の運用の単純化

「シルバーウィーク」という初めての連休は、主に本棚の整理をしていました。

引越の度に捨ててはいたのですが、今度もかなり思い切って捨てました。本業の本はなかなか捨てがたくて、対照的にビジネス書はピーター・ドラッカーの本を含めて数冊です。

副業である投資については、この度、さらに単純にすることにしました。それは次の通りです。

・半年分の生活費は現金で置いておく

・残りの1/4は外債ファンド、3/4は世界株式インデックスETF(バンガード・トータル・ワールド・ストック・マーケットETF:VT)にする

あとは貯金が貯まってきたら外債ファンドとVTを買い足すだけです。シンプルでしょう?

6年前に資産運用を本格的に始めてからの記録があります。試行錯誤を重ねて、ようやく納得のいくシンプルな形にまとめることができました。これも日本での海外ETFの充実のおかげです。

投資関連の本も、木村剛の「投資戦略の発想法」の旧版のみ残して、あとは処分しました。ちと寂しい気もしますが、インデックス派ブロガーさんたちの活躍を見守っていることにします。

お金の勉強は続けていくつもりです。現在、簿記3級試験に向けて勉強中で、できれば2級も受けて財務諸表を読めるようになりたいです。税金や社会保障についてFP3級程度の知識も持っておきたいと思います。

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2009年9月 5日 (土)

下流指向 学ばない子どもたち 働かない若者たち

表題に当てはまるような患者さんがいたため、買ってきて読んでみました。

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) Book 下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

著者:内田 樹
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

全然期待せず、文庫で安いからと買ってきたのに、なかなか面白かったです。

最近の子どもたちは、怠けて勉強しないというよりは、積極的に学ぶことを拒否しているように見えるのはなぜか?という問いから始まっています。

それに対して著者は次のような仮説を提唱しています。

・今の子どもたち(若者たち)は、労働をして報酬を受けるという観念を持つ前に、消費者としての自己を確立してしまっている。

・学習→習得、労働→報酬のプロセスにはタイムラグがつきものだが、消費にはタイムラグがない。消費に慣れきってしまうと、対価を得るまで待てなくなる。そうなると学習は成立しない。

・労働主体は他者からの承認を得るまでみずからの主体性を確立できない(時間がかかる)。一方、消費主体は、貨幣を持っていれば主体性を確保できる。

・だから、「自己決定」を優先して、他者との関係性を構築できないと、労働から逃走せざるを得ない

待てないことで、未来の自分にしっぺ返しを食らうことになります。こうした現状に対し著者は、平たく言えば「なんでもビジネス(等価交換)で考えるのはやめようよ。学んだり働いたり、人とつきあったりする自体に価値を認め、手間暇をかけようよ。そんな場を大事にしようよ」と主張しています。

目先のご利益を求めてしまう自分には耳が痛いなぁ。

あと、線を引いたところは

・学びのプロセスで開発すべきことは何よりもまず「外界の変化に即応して自らを変えられる能力」です(p81)

(時間軸を持つ)生き物として必須の能力

・「ほんとうの私」は、共同的な作業を通じて、余人を以て代え難い機能を果たしたあとになって、事後的に周りの人たちから追認されて、はじめてかたちをとる(p85)

・「自立している人間」というのは・・・その人の判断や言動が適切であることが経験的に確証されたために、周りの人々から繰り返し助言や支援や連帯を求められるようになった人が「自立した人間」と呼ばれるだけ

上二つ、「自分探し」にたいする批判

・「継続審議」と「両論併記」と「三方一両損」・・・これらが、代表的なリスクヘッジの技法です(p107)

・地縁的なものであれ、血縁の共同体であれ、複数の人間で構成される相互扶助組織を持っていないと、やっていけない・・・弱者が弱者であるのは孤立しているから(p238-239)

上二つ、「自己責任」に対するリスクヘッジについて

・高等教育で学んだもっとも重要な技法であるはずのコミュニケーション能力や問題解決能力・・・もっとも重要な「学ぶ能力」は、「能力を向上させる能力」というメタ能力です。(p188)

問題解決とコミュニケーション 一般について。反射的に対応するのでなく、いくつかのパターンに自覚的に落とし込めたら、と思う今日この頃。(今、この道具を使ってるんだな、と思えたらいいな)

・わからない情報を、「わからない情報」として維持し、それを時間をかけて噛み砕くという、「先送り」の能力が人間知性の際だった特徴なわけです(p28)

未解決の問題を頭に飼っておくのは、すごくしんどいことなんです。

最後の二つに関連して「認知療法を学ぶ会」に出た後の連想: 

刺激に対してすぐに反応するのでなく、認知を挟んで、その認知を適応的なものに修正しましょう、というのが認知療法。

脳の仕組みでいえば、感覚野から扁桃体などの情動脳へという回路に対して、高次脳からのコントロールを強化しましょう、と。行動療法を加えて認知行動療法となると、基底核を動員することになる。

高次脳は、現在の情報を(大脳に蓄えた)過去の情報に照らし合わせる。時間がかかるし、エネルギーもいる。パターンにはめて基底核がやってくれるとラク。

可塑性といえば、皮質(海馬、大脳)、小脳、基底核、扁桃体あたり。「身体性」を持ち込めば、小脳も動員できるか。

受験勉強していたとき、独自の方針として、頭は使わず手で解けるように、を目標にしていた。誰に教わったわけでもないと思うが。

前に拾ってきたこんな回路みたいなのが書けたらいいな。

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ちなみに、冒頭に書いた患者さんにこの本を批判してもらおう、と思っていたのですが、いつの間にか仕事を見つけて退院されました。最後まで謎の人物でした。

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