2012年2月12日 (日)

漢方始めました

昨年4月から街中のクリニックで外来をするようになってから、「病気」として診断がつくほどではない程度の心身の不調を訴える方が多いことに気がつきました。

認知療法的なアプローチを試みたり、不眠に対しては睡眠薬、抑うつ的であれば抗うつ薬を出したりしていましたが、しっくり来ないこともしばしばでした。

漢方に興味を持つようになったのは、ある神経質な感じの中年女性と出会ってからです。最初は認知療法的なアプローチから入り、薬も試したいかたずねると試してみたいとの意向だったので、少量の抗うつ薬から始めてみました。しかし薬に敏感で、最小量の半分しか飲めませんでした。認知再構成は多少、役に立っていそうだったので、そちらで進めてみようかと思っていたら、「実は本で読んだのですが・・・」と漢方の処方を希望されました。聞いたことのないものでしたが、薬の本で症状と合っていることを確認した上でお出ししたところ、なんと非常によく効いたとのことでした。

これに気をよくして、今度は妻に飲んでもらったところ、これまたよく効きました。しかも、翌日には変化を感じ、その次の日には早くも効果をはっきりと自覚したそうです。

(上記の症状や薬の名前は伏せています。あしからず)

今度は自分で試す番です。加味帰脾湯はあくびが出て脱力して「何とかなるわ~」という感じがしました。補中益気湯は活気が出るけれども急きたてられてちょっとしんどいな、という感じでした。しっくり来なかったので妻にお腹を触ってもらったところ、肋骨の下を押すと痛みを感じる「胸脇苦満」という症状があったので、教科書的には柴胡剤の適応として柴胡桂枝湯から試しているところです。右の肋骨の下というと肝臓であり、以前、脂肪肝を指摘されたことがあるのと関連しているかもしれません。

今は下記のような本を読みあさりながら、「あの人にはこの薬が合うかな?」などあれこれ考えている今日この頃です。

「不思議に劇的、漢方薬」のシリーズ 益田総子

「漢方診療のレッスン」 花輪壽彦

「漢方実用全書」 丁宗鉄

「本当に明日から使える漢方薬」 新見正則

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2012年2月 5日 (日)

精神保健指定医と精神科専門医

精神科医の資格としては、この二つでほぼ決まりと言っていいでしょう。

私も臨床経験5年を経て申請・受験しました。

1)精神保健指定医: 入院が必要なのに本人の同意が得られない時に入院させたり、入院中に隔離・拘束する権限を持つ資格です。人権を大幅に制限する権限という、ある意味、恐ろしい資格です。

8本の症例報告を提出するだけなのですが、審査は非常に厳しく、必要な文言が入っていない、誤字脱字が複数ある、字数オーバー、といった理由で落とされます。合格率は6割台です。

私はフォーマルな形の症例報告を書いた経験がなく、ずいぶん苦労しました。かつての上司が非常に丁寧に添削して下さったおかげで、昨年の12月に合格通知が来ました。通るか通らないかは、どれだけ丁寧にみてもらえるかどうかに掛かっているように思います。もちろん、診断にケチをつけられないような典型的な症例を揃えることが前提ですが。

ようやく仮免許から一人前の精神科医になれたという感じがします。当直の時も、「指定医を呼ばないといけなくなったらどうしよう」と悩む必要がなくなりました。

2)精神科専門医: 過去のイデオロギー闘争の名残のためか、精神科に専門医ができたのはわずか数年前です。当初は「移行措置」といって症例報告3例と面接だけという大甘な審査だったのですが、3年前から始まった通常の審査はそれなりに大変で、研修手帳の提出、症例報告10例、筆記試験、面接をクリアする必要があります。

症例報告は指定医と部分的にかぶっていて、その勢いで書き上げました。ケチがついたのですが(笑)、なんとか先週、2次試験を受けることができました。

筆記試験はある程度の難易度を保つためなのでしょうが、重箱の隅をつつくような問題が多かったと思います。あと、身体表現性障害とかパーソナリティ障害の問題が多い気がしました。

面接は一人30分で、最初の15分は当日に配布される共通症例についての質疑応答で、ロールプレイ(診断や治療方針について、患者さんに説明してみてください、といった感じ)も求められました。後半の15分は自分の症例報告について尋ねられました。普段から真面目に臨床をやっているか、レポートの症例は自分が本当に経験したのか、をチェックされている感じがしました。

まだ結果は来ていませんが、たぶん通っているでしょう。

3)雑感: 指定医が強制的な入院治療に限定した内容であり、急性期の患者さんを診ている精神科病院や総合病院でないと症例は集めにくいです。それに対し、専門医は外来も含めた幅広い経験を求めており、精神科病院の勤務のみだと症例は集めにくそうです。

専門職として、ある段階でチェックを受けるのは必要なことであり、そのための準備をする経験は有用であったと思います。

ただ、専門医の取得に10万円、5年ごとの更新に4万円というのは高すぎます。年会費1万5千円払ってる上に、です。さらに、実質上、維持するためには5年のうち2回は大会に参加する必要があり、そこまでコストを払ってご利益があるかというと疑問です。

実際、年2回開催される新規申請者のための指定医講習会が常に満席(2回の定員の合計600名)なのに対し、専門医の受験者が100人ちょっとという不人気ぶりは、それを反映しているように思いました。

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