2009年6月28日 (日)

復職支援の講演会

就労者のうつ病に関する講演会がありました。

昨年、病状は改善しているのに、復職前に足踏みしているうつ病の患者さんが何人もおられました。いかに対処すればよかったのか、また、勤労者のうつ病に特化したクリニックがどのように運営されているのか興味があり、参加してみました。

定員は50名とのことでしたが、実際には100人くらいは参加されていたと思います。主な参加者は人事担当者・産業医・保健師・カウンセラーなどだそうです。

前半はその病院の取り組みに関する説明。これは会場に着くのが間に合わなくてほとんど聞けませんでした。

後半は、復職支援デイケアの草分けであるメディカルケア虎ノ門の五十嵐良雄先生の講演で、これが今回の主眼でした。最近、も出されています。51qsmpldmyl

最初にNHKの取材ビデオ(10分間)を紹介され、どんな場所でどんなことをやっているのかイメージをつかみました。その後、具体例を挙げながら最近のうつ病像を紹介し、いかにデイケアまで持っていくか、デイケアでどのようなことをするのか紹介がありました。

最近のうつ病の特徴として

・他罰的

・不安焦燥が目立つ

・人間的に未熟

・重症でなくても薬が効きにくく長期化しやすい

といったことが挙げられていました。特に、「不安が目立つ」というのを繰り返されておられました。

メディカルケア虎ノ門での取り組みとして

・まず主治医が正しい見立て、的確な薬物選択、生活指導で病状を改善させる。(精神科医ができることはこれだけ、とは五十嵐先生の弁)

生活指導の内容として

1)規則正しい睡眠覚醒リズム(いかに時間がかかっても、これがで    きれば見込みがある)

2)日中の生活:午前は図書館、午後は運動(バカの一つ覚えのように言っている、と)

3)リズムの立て直しの努力、アルコールは絶対ダメ

4)復職モチベーションの維持

・デイケアプログラム(だいたい4~6ヶ月)では、

疾病の理解→服薬継続

休職理由の理解→自己分析を通して認知のゆがみに気づく

その他、通勤や作業による負荷、セルフケア

という内容でした。

言われてみれば当たり前のことばかりですが、それを徹底するのは大変です。ただ、逆に主治医ができることはこれだけ、と言ってもらえると少し気が楽になります。

その他の情報として、

・全国でうつ病で休職している人の概算は20万人くらい(筆者:仮に年収400万円とすると、1年で8000億円の損失)

・復職が上手くいかない原因として、数分の診察時間では回復レベルが充分に判定できない、また、「主治医が考える復職可能レベル」が「職場の求める復職可能レベル」に比べてはるかに低い

以上がセミナーの概要です。以下は私の感想等です。

・復職デイケアが始まってわずか4年ですが、システマティックに運営されている印象でした。虎ノ門という場所柄、ホワイトカラーのエリートにほぼ限定されており、パターンが掌握しやすいためかもしれません。

・デイケアは週2回以上、参加できることが条件となっており、目的はもちろん、内容もかなりフォーカスされているように感じました。成果を上げるためには必要な条件なのかもしれません。条件を絞っても対象者が大勢いる(定員50名がほぼ満員)のは東京ならではなのでしょうか。

・保険診療内で運営されており(デイケアだと1日660点)、場所代、人件費など勘案すると、利潤目的の事業ではないのでしょう。社会のニードに対応した新しい医療にチャレンジする五十嵐先生の意欲を感じました。

・職場との連携はどのようにやっておられるのか話はありませんでした。おそらく、今後の課題なのでしょう。EAPも兼業して、メンタルヘルス全般をカバーしようとしているみたいです。

・「不安」については、前回のエントリで紹介した「不安を生きる」で島田氏は

きっちりした生活を送るということは、不安から解放されるためには本当に重要なことなのではないか(p192)

何らかの共同体に帰属することができれば安心感があって、不安を感じないで生きられる。(p162)

と述べています。

うつ病からの回復ための生活指導、一時的なの共同体としてのデイケアに相当しますね。

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2009年6月26日 (金)

「不安を生きる」 島田裕巳

不安を生きる (ちくま新書) Book 不安を生きる (ちくま新書)

著者:島田 裕巳
販売元:筑摩書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

宗教学者で、けっこうたくさん本を書いています。

この本では、編集者との対話という形で、現在の社会を覆う不安を分析しています。ポイントは以下の通り

・今の心理学や哲学は現代の不安を扱いきれない

・歴史的に「不安」は宗教と表裏一体であったが、現代では社会という視点が最も大事だろう。

・村から都会に出てきて、所属する共同体を失ったことが主因である。以前はその受け皿だった会社や新興宗教は、現在では共同体としての機能を果たせなくなっている。

・消費を煽るための手段として「不安」が利用されているふしもある。

・「不安」は緊張感、進歩、達成感を生むために必要であり、不安のない社会はありえない。対象のない「不安」を、具体的な「悩み」に転換し、解決するために努力するのが大事

・現在、存在する共同体の例として、家族、同窓会。もっとゆるい関係として、趣味の仲間、なじみの店、ブログ

「不安」の分析は、言い得て妙という箇所が何カ所もあり、頭が整理されました。哲学や心理学じゃなくて、やっぱり社会とか宗教だな、というのは実感としてあります。

私が精神科に転向したのも、この時代を流れる「不安」をもっと見つめたい、できれば解決策を提示したい、というのが主な動機でした。ただ、「メンタルヘルス」が勤労者の休職や復職支援に限定されたら(経済的にはそう流れがちなのでしょうが)寂しいと思います。より一般的な問題として、人と人とのネットワークをつくる仕掛けをぼんやりと探しています。

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2009年6月10日 (水)

世界株式ETFがついに日本で発売に!

カン・チュンドさん梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーさんが紹介されているように、バンガード・トータル・ワールド・ストック・マーケットETFが日本でも発売されることになりました。

これは、世界市場を時価総額に比例して買うことができるというものです。

各国の株式市場が異なったルールで運営されている以上、効率性には疑問があります。

むしろ、「世界をひとまとめにする」というコンセプトのもつインパクトが大きいと思います。それこそまさに、3年前に「臆病者のための株入門」(橘玲著)を読んで衝撃を受けたことでした。

ジョン・レノンの"Imagine"の "And the world will be as one"という歌詞が浮かんできました。フラットになりつつある世界にどのように参加するのか?その一つの手段を手にしたという喜びを感じます。

旅は続きます。

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2009年5月22日 (金)

精神科の達人---神田橋條治先生の講演

神田橋條治先生は、日本の精神科医では知らない者がいないくらい有名な先生です。精神科診断面接のコツ(追補)、 精神療法面接のコツ、精神科養生のコツ の「コツ三部作」は非常に有名で、臨床で使える精神療法としてよく読まれています。

昨晩の当直でwebで神田橋先生の講演録を見つけました。医局でも探したのですが、この号だけ見つかりませんでした(笑)

最近、先生は双極性感情障害(躁うつ病)、PTSDについて講演されており、それに続く第三弾として発達障害のお話です。いずれも見過ごされることが多く、いわゆる「難治例」として扱われるものです。前二者も面白く、今回のも非常に興味深かったです。

特に興味深いのは、発達障害の病因として、前頭葉に加えて小脳が大事でないか、という点です。発達障害の人は不器用であること、体を使ったトレーニングにより症状が改善すること、を傍証として挙げられています。

精神科医が小脳について考えることはまずないので、そういう発想が出てくるのがすごいと思います。

小脳は学習理論が有名ですが、高次認知機能に関わっているのでないか、という話が徐々にでてきています。10年くらい前に川人光男先生の講演を聴いたとき、(充分に理解したとはいいがたいものの)非常に面白く思いました。

小脳であれば薬はあまり効かないだろう、むしろ運動を中心とした学習・トレーニングが大事になってくるだろう、と思いますね。

先生は「邪気が見える」とか「Oリング」というオカルト的な表現をされていますが、おそらく個々の患者さんの表情、雰囲気、服装、などの限られた情報を、バックグランドにある莫大な知識と経験と照らし合わせると、勝手にアイデアが出てくるのだと推察します。

凡人としては、そのギャップを地道に文献で埋めていくしかないのかな、でも、それをきっちりやっていけば新たなアイデアがどんどん出てくるだろうし、clinical neuroscientistとして相当のレベルに行けるのかな、と思います。

あと、質疑応答での先生のコメント

「全体主義的になると研究者のほうに行きまして、個性的になると治療者のほうに行きます」

はすごい的確ですね。その軸のどのあたりに自分がいるか、どちらを指向しているか、意識したいと思います。

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2009年5月15日 (金)

スラムドッグ$ミリオネア

前回、映画館に行ったのはいつだったか思い出せないくらい映画を観に行かないのですが、la dolce vitaさんがブログで薦めていたのを読んだ次の日にアカデミー賞を受賞し、何かの縁と思って観に行ってきたのがスラムドッグ$ミリオネアです。

とにかく揺さぶられる映画でした。息をつかせぬカメラワーク、リズミックな音楽、そしてインド社会の闇と最近十数年の劇的な変化を織り込んだストーリー、とぎっしり詰まっている感じでした。前半の暴力的なシーンを乗り越えれば、後味も悪くありません。

だからインドに行きたいか、と言われれば(インドで亡くなった知人もいるので)二の足を踏むのですが、興味は大いにかき立てられました。ヨガや仏教の故郷でもありますし。

あとは周辺のこと、連想したことを

・平日の午前とはいえ席はガラガラでした。上映前に録画禁止のしつこい警告や、映画と全く関係ないコマーシャルがあって、不愉快な思いをしました。ポップコーンの甘い香りを蔓延させているのも古くさい感じがします。これだけ時代が変わっているのだから、もっと上手なビジネスができないかと思います。

・音

映画館の音は圧倒的で、慣れるまでしばらくかかりました。これは、昨年、ミュージカルを観に行ったときも感じたことです。仕事柄、「聴く」ことに繊細になっているので、音を浴びせられるときついのです。

・臭い

もちろんスラムを体験したことはないですが、バリで午後の市場に行ったとき、食べ物が腐ったようなすえた臭いがしたのを思い出しました。

老人の多い病棟では、部屋にポータブルトイレが置いてありますが、これが非常に臭い。便秘にならないよう、しこたま下剤を投与されていて下痢ないし軟便なのでなおさらです。

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2009年5月13日 (水)

薬理学と、in vivoの電気生理の実験と

精神科の治療の大きなウェイトを占めるのが薬物療法です。

どの受容体に作用するかはわりと分かっているのですが、実際に脳のどの領域で、どんな効き方をしているから目的の効果を得られるのか、というメカニズムは充分に分かっているわけではありません。

現場では「この薬をこれくらい処方したらこんな効果があった」という経験の積み重ねで主にやっています。もちろんそれで上手くいけば問題ないのですが、上手くいかなかったときにいかにトラブルシューティングするか、その精度を上げるためにはやはり薬理学な知識・理解が必要だな、とあらためて感じてきた今日この頃です。

薬を入れるというインプットと、気分とか行動とかが変わるというアウトプットの間には大きなギャップがあります。その間をイメージする大きな助けとなっているのは、5年ほど前にやっていたin vivo(生きている動物)の電気生理の実験です。

マウスに麻酔をかけ、脳に電極を刺し、一個一個の神経細胞の活動を測定していました。バルビツレート麻酔で眠らせると大脳皮質の細胞はシーンと静まりかえっており、麻酔が切れてくると神経細胞が徐々に活動するようになってきます。麻酔が切れてマウスがバタバタするようになると、また麻酔を足して、というふうに、意識レベルと脳の活動を並行して観察していたことは貴重な経験であり、それこそが生理学の醍醐味だと思います。

そのときはマウスの気管切開をしたり、脳を傷つけないように薄い頭蓋骨を剥がしたり、皮膚を縫合したり、とミニミニサイズの外科手術を毎日のようにやっていました。

私自身は経験ないのですが、同じ研究室にはネコの電気生理の装置もあり、人工呼吸器をつけながら3日間、交代で記録を取り続けていたこともあったそうです。

病院で一人当直をするようになり、救命処置、特に挿管できるなければ、と感じ、そろそろ他の病院の麻酔・救急に週1回習いに行こうと思っています。それもあって、マウスに麻酔をかけていろいろ処置をしていたころのことを思い出しました。

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2009年5月 8日 (金)

金融口座の整理

ちょっと落ち着いてきたので、銀行と証券の口座を整理しました。

銀行はソニー銀行と地元の信用金庫、証券はマネックスの口座を閉鎖しました。残したのは、某メガバンクと某インターネット証券の二つだけです。

ソニー銀行は、斬新なウェブスタイルと中央三井信託の国際型債券インデックスが魅力で申し込みましたが、その後はぱっとしませんでした。信用金庫は家賃の払い込みのために無理矢理作らされて、そこは引っ越したので。マネックス証券は某インターネット証券に比べて海外ETFの取り扱いが貧弱なので、やめることにしました。

銀行は当座の生活資金だけなので、資産運用は証券会社のみです。アメリカ株25%、ヨーロッパ株25%、新興国株20%、海外債券20%、現金10%、という単純なポートフォリオでやってこうと思います。

また、給料も今までよりだいぶ上がったので、着実に積み上げていくつもりです。そのためにも、家計簿を復活せねば、と思っています。

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2009年5月 4日 (月)

料理してます

妻より早く帰ることが多くなったため、晩ご飯の支度を週半分以上しています。

一人暮らしの頃は週末だけやっていました。そのころはレシピ本(主にケンタロウの本)を見ながらやっていましたが、メニューを決めるのにけっこう時間がかかっていました。実際に調理するよりも、メニューを決めて買い物する方が面倒なのです。

今は料理サイトを検索することが多いです。よく使うのはクックパッドとかきょうの料理とか3分クッキングです。

昨日は鰆の味噌漬けと豚汁を作りました。白味噌の豚汁がコクがあって非常に美味でした。090312_2_m 090312_3_m

大阪に比べて新鮮な魚はかなり高いです。これだけ流通が発達した時代なので、京都にも安くて新鮮な魚がもっと入ってくれるといいのですが。

皆さんもいいレシピがあればぜひ教えてください。

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2009年4月19日 (日)

マネー資本主義--NHKスペシャル

今日から「マネー資本主義」というシリーズが始まりました。

初回のテーマは「“暴走”はなぜ止められなかったのか~アメリカ投資銀行の興亡~」です。内容は(当然)昨年からの金融危機を検証するものです。

同業他社との競争という恐怖と、業績に連動するトレーダーの報酬という欲望が推進力となって、レバレッジを際限なく大きくしてはじけちゃった、というストーリーです。

約10年前、やはりNHKスペシャルでやっていたマネー革命〈第3巻〉リスクが地球を駆けめぐると全く同じ構造です。対象が新興国の為替・債券からアメリカの住宅ローンに変わっただけです。分かっているけどやめられないことなのでしょう。

それも関わっていると想像しますが、1年ぶりに京都に帰ってきて、河原町通沿いの店がたくさん閉まっていて驚きました。再生を期待したいです。

夕食は近所の中華料理屋さんの燕々に行ってきました。予約しておいて正解で、全席、予約が入っていました。リーズナブルな値段と優しい味で大満足です。

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2009年4月11日 (土)

単科の精神病院に勤め始めて

この4月から単科の精神病院に勤め始めました。精神科しかない病院に勤めるのは初めてなので、その印象をフレッシュなうちに記しておこうと思います。

アウトラインだけ紹介すると、まあまあ大きくて、独自のポリシーを持っているためその筋では有名な病院です。地域との連携も積極的に進めています。

第一に、入院患者さんの高齢化です。平均年齢は60歳を超えています。これは、(退院のための努力があっても)長期入院の方が残っておられ、新しく入院になる方はだいたい3ヶ月くらいで退院になっているためです。それに加え、認知症病棟があり、こちらは当然、高齢者が多いです。

第二に、その結果として、身体合併症が非常に多い。この1週間だけでも肺炎など身体疾患のため転院となった方が複数おられます。精神科医といえども、身体疾患への対応が重要になっています。

職場としては風通しが良く、仕事はやりやすそうです。経営的に安定していて待遇が悪くないのもその一因でしょう。

これは勤め始める前のエピソードですが、友人のお父様に「○○病院に勤めることになりました」と伝えたところ、「いつかお世話になるかもしれませんね」と冗談めかして答えられました。「精神病院」というのは一部の「狂人」を収容する施設としての認識から、「もしかすると自分も入るかもしれないところ」という認識に変わりつつあるのかもしれません。

社会から阻害される対象として、以前はライ病、結核があり、その次に精神病(主に統合失調症)、そして認知症にも重心が移ってきています。医療や福祉についてしっかり学んでいくとともに、人々の暮らしにも目を向けていこうと思います。

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