2023年2月 5日 (日)

日本文学盛衰史 演劇(ネタばれ注意)

平田オリザ氏の演劇は、タイミングが合えば見に行くようにしています。コロナの間は観に行けなかったので、今回は久しぶりで楽しみにしています。事前に平田氏の「名著入門」に目を通して予習したくらいです。場所は伊丹アイホール、JRの伊丹駅から徒歩すぐです。土曜の夜の部で、観客は中高年男性が目立ちます。

観劇直後の感想は「???」です。セリフが説明的すぎるし、登場人物が多すぎて途中から名札つきになったり、途中から俄然コミカルになったり。

筋は通っているし、ギャグや小ネタが盛りだくさんで、2時間半近くの長尺は気にならなかったのですが。

モダニズムの受容がテーマだとして、敢えて通史という形をとったのはどうしてだろう、とか帰りの電車でつらつら考えていました。

でも、島崎藤村の「破戒」とか「夜明け前」とか読んでみようという気にはなりました。「破戒」は近代小説の完成形だったんですね。

行く途中に大阪駅で降りて、ホワイティ梅田(昔、通勤で通っていました)のピッコロカリーで食べたカレーが濃厚で良かったです。

 

いつも思うのですが、30人以上が汗水垂らして作り上げた作品を3000円で鑑賞できるのは、いかにも安いです。150人くらいの観客でペイするのかな?と心配になります。

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2022年12月28日 (水)

自動車免許の更新

5年ごとの例のやつです。

10年前は、運転免許試験場まで行っていました。市内から片道1時間くらいかかり、完全に半日仕事でした。最寄駅からバスが1時間に2本くらいしかなく、バス停で大学の同級生と久しぶりに会って、話し込みました。

5年前は、ターミナル駅の近くに運転免許更新センターができ、講習も含めて1時間で終わりました。

今回は、講習を事前にオンラインで受けられるとのことで、講義を受けていったら、30分以内に交付されて驚きました。ほぼ本人確認と写真撮影だけです。

今後、マイナンバーカードとの一体化も検討されているようです。日本も変わらないようで変わっているのですね。

 

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2022年9月23日 (金)

バイオ サイコ ソーシャル 十五年説

Engelのバイオ・サイコ・ソーシャル モデルでもありませんが・・・今日、気づいたことを書き残しておきます。

 

私が医学部に入ってから基礎研究を辞めるまでの15年は、バイオの時代でした。

精神科医に転向して、サイコセラピーについてそれなりに勉強して、だいたい15年でもういいかと思いました。ただ、それで終わりにすると何も残らないので、論文を書いていますが。

次はソーシャルです。精神科医として、雇用面では休職や復職、傷病手当の診断書、福祉面では障碍者手帳や年金の診断書、生活保護受給者の医療要否意見書、介護保険意見書、などなど週に何通書いているやら、という感じです。

こうした話題には、倫理的問題をはらんでいます。たとえば、「貧乏人は気の毒だ」と思うか「貧乏人は怠け者だ」と思うかで、診断書の書きぶりは変わってくるでしょう。

社会科学の導き手として、小室直樹さんを選ぶことにしました。今は「痛快!憲法学」を読んでいます。自分があまりに無知のまま生きてきたことを思い知らされながら、楽しく学んでいます。あと15年は、ということになるのでしょうか。

 

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2022年9月19日 (月)

精神科医に何を求めるか

精神科の雑誌をパラパラと立ち読みしていた時に、歌人の河野裕子氏が「非定型精神病」で精神科医の木村敏先生の診察を受けていた、という一文を読みました。

木村敏先生は私の同門の大先輩であり、精神病理学の大家です。以前、私が勤務していた病院に週1回来られていて、私はその姿を遠くから拝見していました。

河野氏は乳がんの術後に情動不安定になり、夫であり歌人である永田和宏氏を夜ごとに罵るようになります。困り果てた永田氏は、旧知の木村敏先生に助けを求めました。木村先生の診察を受けるようになった河野氏は、ゆっくりと確実に回復していきました。二人の関係は、医師と患者という関係を越えて、大きな意味をもつようになったとのことです。

https://www.lifesci.co.jp/special/interview-%E3%82%AA%E3%83%94%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%8F%E3%80%80%E6%B0%B8%E7%94%B0-%E5%92%8C%E5%AE%8F-%E6%B0%8F/

一見、美談であるようですが、違和感が残りました。

どのようなストーリーなら違和感が残らないか?

「河野は自宅から近い心療内科を受診した。50代と思しき地味な女性医師が診察した。時に感情を高ぶらせる河野の話に医師はじっと耳を傾け、『癌になってからというもの、日々辛いことばかり、この先生きていても絶望しかない、という感じなのですね。』と述べた。河野の目に涙が溢れた。

医師は睡眠薬の代わりに眠気が出るという抗うつ薬を処方し、1週間後に受診するよう伝えた。翌週以降の診察は10分程度で、河野の愚痴を医師がじっと聞き、最後に処方の調整の話が出るくらいだった。河野は2週間を過ぎたころから少しずつ寝れるようになり、2か月を過ぎるころには落ち着きを取り戻していった。多いときは6錠だった処方も1年後には2錠になり、診察も月1回5分程度となった。」

こうなると、典型的なうつ病の経過で、違和感はありません。

おそらく私が違和感を感じたのは

・有名な歌人のように感受性の豊かな人は、特別な医師しか治すことができない。

・精神科医は、単に病気を治すだけでなく、スピリチュアルな領域にも踏み込むべきである。

という(書かれざる)前提があると感じられたからでしょう。

臨床医を15年以上もやっていると、いわゆる「名医」がひどい処方を出していたり、逆に全く無名の若手医師がきわめて手際よく治療を進めたりする例を見聞きします。また、中身(治療)よりも包装紙(医師や病院の知名度)の方が重視されることがあるのも、よく知っています。

自由診療であれば高いお金を払って有名な先生の診察を受けたら、と思いますが、保険診療であれば、無名の医師がオーソドックスな治療をして、治療が終わって1年もたったら患者は主治医の名前を忘れている、くらいが良いのではないかと思っています。少なくとも、私なら後者を選びます。

 

 

 

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2022年8月27日 (土)

酔わない檸檬堂

最近、夜遅くに娘の塾の送り迎えをする必要があり、お酒を飲みにくくなりました。

で、ノンアルコール・ビールをいろいろ試してみましたが、どれもカラメル風味でマズいのです。

ビールがダメならレモンサワーだというわけで、これを飲んだら大当たり!

単なるレモネード以上の代物で、ジンの香料も合わせているようです。

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2022年7月 2日 (土)

Born in the USA

アメリカの勉強をしています。主にプラグマティズムについてです。論文のディスカッションを書いているうちに、そこがキモだとわかってきたためです。たぶん、精神療法をプラグマティズム(主にデューイ)の観点からみました、という論文になりそうです。意外といえば意外ですが、ストンと腑に落ちるところがあります。

プラグマティズムで重要なのは、合理的思考と(アメリカ的な)キリスト教の関係です。

森本あんり先生が「アメリカというのは科学とキリスト教を2つの中心とする楕円構造をとっている」と述べておられるとのこと(橋爪・大澤の「アメリカ」から孫引き)。それを押えないと、トランプのアメリカを理解できなのです。

では、日本でキリスト教の代わりとなるのは?次の課題です。

 

世界サブカルチャー史「アメリカ 葛藤の80’s」を見ました。正確に言うと、まだ前半だけですが。

印象に残ったのは、ブルース・スプリングスティーンの"Born in the USA"は、けっしてアメリカを称える歌ではないということ。

歌詞がなかなかすごくて、貧しい若者がベトナムに送られて、きょうだいがベトナムで亡くなって、帰国しても酷い扱いを受けて、という内容。その合間に、"Born in the USA"と叫ぶ姿に泣けてきます。
ロナルド・レーガンは、大統領選挙で愛国心を煽るためにこの曲を使ったとのこと。曲の意味を曲解して、という解釈もありますが、レーガンはわかって使ったんじゃないかな。単純なメッセージよりも、「葛藤を抱えながらも前に進もうよ」というメッセージの方が、国民に刺さるということと。

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2022年5月24日 (火)

文章を読む、文章を書く

私はバイオロジストとして訓練されてきました。理系の文章は図や表が情報として大きな割合を占めるのと、ほぼフォーマットが決まっていることから、書き方をあまり習いませんでした(それより実験しろという教育)。また、論文を読む訓練も受けましたが、論証よりも技術面に重点があったと思います。

現在、文系の文章(教育)を書く中で大いに苦労しており、なぜこんなに苦労するのだろうかと悩んでいました。そこで役に立ったのはこの本

正しい本の読み方 橋爪大三郎 講談社現代新書

橋爪大三郎さんの本は、30年前に「はじめての構造主義」(講談社現代新書)を買いました。今は亡き友人から勧めてもらいました。10回近くの引っ越しを経てまだ手元にあるということは、私にとって大事な本だと言えるでしょう。

最近、「評伝 小室直樹」(ミネルヴァ書房)を読み、橋爪さんが小室直樹氏のゼミを支え続けたことを知りました。小室直樹氏はたまたま父親と大学時代の同級生で、湯川博士にあこがれて全国から京大理学部に集まった俊英の中でも飛びきりの奇人だと聞いていました。その小室氏を支えたというのは、かなり包容力のある方なのでしょう。

「正しい本の読み方」に戻り、大事だと思ったフレーズを列挙します。

「本は、ネットワークをつくっている。(p42)」

「同時代として新しいことをきちんと考えていこうと思ったら、大著者を見つけて、それとの関係で仕事をするのが、いちばん話が早い。・・・大著者との関係で仕事をする。そのことを知っていれば、本を読む手掛かりになります。(p144)」

(”必ず読むべき「大著者100人リスト」”p156~160)

「著者が自分の前提に自覚的でない、必ずしも。(p75)」

「理屈のなかには、価値はない。価値は、前提の中にあります。(p219)」

「どんな議論にも、隠れた前提があるものと考えておくべきなんです。特に、争いを解決しようと思う場合には、そうしないといけない。(p221)」

「理系の文章は、解釈が分かれる余地がなく、分岐がなく、誰もが同じように読めるようにできているんです。(p102)」

「文学とか、歴史とか、思想系のものにはみな、複数の考え方があって、複数の立場が並立している。・・・複数の正しい立場がありうる、ということなわけです。・・・その立場が成り立つものとして、読まなければならない。読み終わったあとではじめて、でも、私はこの立場は採らないよ、と態度をはっきりさせる。そういうふうにしか読めないのです。(p103)」

「人文系の著者は、だいたい仲が悪い。互いに意見が合わない。・・・ケンカを始めるかもしれない、私の頭の中で。・・・そうやって、私の頭のなかの著者がだんだん増えていく。これが本を読むということだと思う。入門書では、これは起こらない、たぶん。でも、ある著者の書いたなまの本を読むと、こういうことが起こり始める。本は生命力があるから。(p81)」

 

要約すると、

「人がより良く生きていくためには、さまざまな異なる価値観をもつ人たちを知ることで、自分の価値観=前提を知り、争いや矛盾の解決に役立てていく必要がある。そのためには、歴史の淘汰をくぐり抜けてきた名著にあたるのが近道である。」

ということになるでしょうか。

文章を書くということは、自分の文章を批判的に読むということもセットになります。「前提=自分の価値観にも意識的に」と求められると、よけいに文章が進まなくなってしまいますね。

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2022年3月 8日 (火)

文章の綴り方

前回に続き、文章の書き方を考えました。

参考にしたのは以下の本です。

小論文・レポートの書き方 パラグラフ・ライティングとアウトラインを鍛える演習帳  野田直人著 人の森

改訂新版 核技術・伝える技術 倉田保美 あさ出版

 

1)パラグラフ・ライティング

パラグラフ1つにつき「いいたいこと」を1つ書く、パラグラフの最初の文(トップセンテンス)だけ読んで行っても話が通じるように書く、ということです。

試しにさまざまな英語の文章を読むと、トップセンテンスだけで要旨を掴むことができました。日本語の文章だと、そうでもありません。

英文では共有されているルールでありながら、残念ながら私は明示的に習ったことはなく、意識して書いたこともありませんでした。

こうして書こうとすると、最初はかなり戸惑いますが、すぐに整理しやすいことに気づきます。今まで何をやって苦しんでたんだろうな、と思います。

ちなみに、パラグラフ・ライティングを支援するツールとして、マイクロソフト・ワードには「アウトライン・モード」があります。私も試してみましたが、今一つな感じがして、けっきょく続きませんでした。

 

2)既知の情報から未知の情報へ

既知の情報から未知の情報という順序に並んでいると、読者にとって理解しやすいので良いということです。

これも、逆を考えれば、つまり未知の情報が先だと理解しにくいというのは、当たり前のことですね。

これも意識して書いたことはありませんでした。文を推敲している時に、意識せずにやっていたとは思いますが。

 

追記

その後、積読であった木下是雄著の「理科系の作文技術」(中公新書)を読み、パラグラフライティングを確認しました。やはり名著は名著であり、早く読んどけばよかったです。

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2021年12月12日 (日)

文章を書くのに時間が掛かるのは?

子供が中学受験のため塾に通い始めてしばらくしてから、「二月の勝者」というドラマが始まりました。中学受験の塾を舞台に、さまざまな家庭とそれを支える塾関係者を描いたドラマです。独善的に見えるプロ塾講師が、実は子供の特徴をよく観察・把握し、的確な介入を行っている、というのがミソです。

中学受験つながりで、プロ家庭教師「ジュクコ」さんの人気ブログを見つけました。

https://ameblo.jp/jyukuko/

首都圏の受験事情が生々しく描かれています。

著書も出ています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4065251265?ascsubtag=p_7exOxuzVHz156aUSS0mai7&linkCode=ogi&psc=1&tag=amebablog_st1-22&th=1

ジュクコさんのブログで、読解力についての解説が新井紀子さんの「AIに負けない子供を育てる」を基にされていたので、「AIに・・・」も購入しました。

「AIに・・・」の核となっているのは、AIの読解力を評価するために作成された「リーディングスキルテスト(RST)」が、実は人間の読解力の評価にも非常に有効であるという主張です。

RSTでは、「事実について書かれた短文を正確に読むスキル」を6分野に分類して、テストを設計しています。

・係り受け解析:文の基本構造を把握する力

・照応解決:指示代名詞が指すものや、省略された主語や目的語を把握する力

・同義文判定:2文の意味が同一であるかどうかを正しく判定する力

・推論:小学6年生までに学校で習う基本的な知識と日常生活から得られる常識を動員して文の意味を理解する力

・イメージ同定:文章を図やグラフと比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力

・具体例同定:言葉の定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力

体験版をやってみると、子供から話しかけられながらぼーっとした頭でやったせいか(言い訳;)、けっこう間違いがありました。

驚くべきことに、高校のRST能力値の平均とその高校の偏差値には極めて高い相関があったとのことです。その理由として、教科書を読んで正しく理解するにはRSTが評価するスキルが必要だから、とされています。

と、ここまでが長い前置きで・・・

私は文章を書くのに非常に時間がかかるという悩みを抱えています。語彙の少なさも問題ですが(これは日本語版シソーラスでかなり解消しました)、ここで挙げられている6つのスキルがスムーズに運用できない、ということに気づきました。

それが課題として明瞭になるのが英文和訳です。主語は英語では必須ですが、日本語では省略可能です。また、長い関係詞節を自然な日本語にするには、語順を工夫する必要があります。そこで順番を入れ替えると、指示代名詞を置き換える必要があります。訳した文章と元の文章の意味がズレていないか検証する必要があります。こんなふうに、「英文和訳」というのは日本語の国語力が大いに試されるのです。

英文和訳と同様のことが、自分の頭の中にあるアイデアを文章にする時に問題になります。ここ2,3年ほど日本語で論文を書いており、ずっとこの作業に苦労しています。

こうした能力を伸ばすには、おそらく、じっくり読むトレーニングをすることと、日々の書き物を丁寧にすることしかないでしょう。かつて精神科ではいわゆる「古典」の原書を訳しながら精読するという慣習がありましたが、今や完全に廃れてしまいました。書いた文章に対して最も厳しい批判を受ける場面は鑑定と博士論文でしょうが、鑑定をする精神科医は一握りですし(私もしません)、「博士論文は英語で」という大学院が多く日本語で論文を書く機会は減っているようです。ただ、「本当にクリティカルに考えるには、母語でないと難しい」と私は感じています。

これから日本語で読む書きをするときは、上の6つのスキルを意識しようと思いました。

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2021年10月 2日 (土)

私の欠片(かけら)と、東京の断片

東京の生活史 (岸政彦編)の出版に合わせて、ETV特集として放送された番組

https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2021115827SA000/index.html

とにかくエモい!特に、博打で借金を作った父親が死にそうな時に花火がばんばん上がって、という話なんて、めちゃめちゃエモい。

 

いちおう語り手が主人公だけど、じつは聞き手のウェートがとても大きい。

現役デリヘル嬢の話を元同僚が聞き手になって、自分の体験を反芻している。

「語りは相互作用から生まれる」ってのがよくわかる。

小泉今日子のナレーション、これまたよい。

 

偶然と必然、個別性と一般性。

精神科医のオモロさって、こういうナラティブに巡り合えるところかな。

逆に、この番組や本がオモロない子って、精神科医やってもオモロないやろうな。

 

語りを編集するのはすごく大変だっただろう。キモの一文を選ぶのも。ご苦労様。

それにしても、岸さん、めっちゃカッコええなぁ。

 

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