復職支援の講演会
就労者のうつ病に関する講演会がありました。
昨年、病状は改善しているのに、復職前に足踏みしているうつ病の患者さんが何人もおられました。いかに対処すればよかったのか、また、勤労者のうつ病に特化したクリニックがどのように運営されているのか興味があり、参加してみました。
定員は50名とのことでしたが、実際には100人くらいは参加されていたと思います。主な参加者は人事担当者・産業医・保健師・カウンセラーなどだそうです。
前半はその病院の取り組みに関する説明。これは会場に着くのが間に合わなくてほとんど聞けませんでした。
後半は、復職支援デイケアの草分けであるメディカルケア虎ノ門の五十嵐良雄先生の講演で、これが今回の主眼でした。最近、本も出されています。
最初にNHKの取材ビデオ(10分間)を紹介され、どんな場所でどんなことをやっているのかイメージをつかみました。その後、具体例を挙げながら最近のうつ病像を紹介し、いかにデイケアまで持っていくか、デイケアでどのようなことをするのか紹介がありました。
最近のうつ病の特徴として
・他罰的
・不安焦燥が目立つ
・人間的に未熟
・重症でなくても薬が効きにくく長期化しやすい
といったことが挙げられていました。特に、「不安が目立つ」というのを繰り返されておられました。
メディカルケア虎ノ門での取り組みとして
・まず主治医が正しい見立て、的確な薬物選択、生活指導で病状を改善させる。(精神科医ができることはこれだけ、とは五十嵐先生の弁)
生活指導の内容として
1)規則正しい睡眠覚醒リズム(いかに時間がかかっても、これがで きれば見込みがある)
2)日中の生活:午前は図書館、午後は運動(バカの一つ覚えのように言っている、と)
3)リズムの立て直しの努力、アルコールは絶対ダメ
4)復職モチベーションの維持
・デイケアプログラム(だいたい4~6ヶ月)では、
疾病の理解→服薬継続
休職理由の理解→自己分析を通して認知のゆがみに気づく
その他、通勤や作業による負荷、セルフケア
という内容でした。
言われてみれば当たり前のことばかりですが、それを徹底するのは大変です。ただ、逆に主治医ができることはこれだけ、と言ってもらえると少し気が楽になります。
その他の情報として、
・全国でうつ病で休職している人の概算は20万人くらい(筆者:仮に年収400万円とすると、1年で8000億円の損失)
・復職が上手くいかない原因として、数分の診察時間では回復レベルが充分に判定できない、また、「主治医が考える復職可能レベル」が「職場の求める復職可能レベル」に比べてはるかに低い
以上がセミナーの概要です。以下は私の感想等です。
・復職デイケアが始まってわずか4年ですが、システマティックに運営されている印象でした。虎ノ門という場所柄、ホワイトカラーのエリートにほぼ限定されており、パターンが掌握しやすいためかもしれません。
・デイケアは週2回以上、参加できることが条件となっており、目的はもちろん、内容もかなりフォーカスされているように感じました。成果を上げるためには必要な条件なのかもしれません。条件を絞っても対象者が大勢いる(定員50名がほぼ満員)のは東京ならではなのでしょうか。
・保険診療内で運営されており(デイケアだと1日660点)、場所代、人件費など勘案すると、利潤目的の事業ではないのでしょう。社会のニードに対応した新しい医療にチャレンジする五十嵐先生の意欲を感じました。
・職場との連携はどのようにやっておられるのか話はありませんでした。おそらく、今後の課題なのでしょう。EAPも兼業して、メンタルヘルス全般をカバーしようとしているみたいです。
・「不安」については、前回のエントリで紹介した「不安を生きる」で島田氏は
きっちりした生活を送るということは、不安から解放されるためには本当に重要なことなのではないか(p192)
何らかの共同体に帰属することができれば安心感があって、不安を感じないで生きられる。(p162)
と述べています。
うつ病からの回復ための生活指導、一時的なの共同体としてのデイケアに相当しますね。


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