« ストレスについて話してきました | トップページ | お金の運用の単純化 »

2009年9月 5日 (土)

下流指向 学ばない子どもたち 働かない若者たち

表題に当てはまるような患者さんがいたため、買ってきて読んでみました。

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) Book 下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

著者:内田 樹
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

全然期待せず、文庫で安いからと買ってきたのに、なかなか面白かったです。

最近の子どもたちは、怠けて勉強しないというよりは、積極的に学ぶことを拒否しているように見えるのはなぜか?という問いから始まっています。

それに対して著者は次のような仮説を提唱しています。

・今の子どもたち(若者たち)は、労働をして報酬を受けるという観念を持つ前に、消費者としての自己を確立してしまっている。

・学習→習得、労働→報酬のプロセスにはタイムラグがつきものだが、消費にはタイムラグがない。消費に慣れきってしまうと、対価を得るまで待てなくなる。そうなると学習は成立しない。

・労働主体は他者からの承認を得るまでみずからの主体性を確立できない(時間がかかる)。一方、消費主体は、貨幣を持っていれば主体性を確保できる。

・だから、「自己決定」を優先して、他者との関係性を構築できないと、労働から逃走せざるを得ない

待てないことで、未来の自分にしっぺ返しを食らうことになります。こうした現状に対し著者は、平たく言えば「なんでもビジネス(等価交換)で考えるのはやめようよ。学んだり働いたり、人とつきあったりする自体に価値を認め、手間暇をかけようよ。そんな場を大事にしようよ」と主張しています。

目先のご利益を求めてしまう自分には耳が痛いなぁ。

あと、線を引いたところは

・学びのプロセスで開発すべきことは何よりもまず「外界の変化に即応して自らを変えられる能力」です(p81)

(時間軸を持つ)生き物として必須の能力

・「ほんとうの私」は、共同的な作業を通じて、余人を以て代え難い機能を果たしたあとになって、事後的に周りの人たちから追認されて、はじめてかたちをとる(p85)

・「自立している人間」というのは・・・その人の判断や言動が適切であることが経験的に確証されたために、周りの人々から繰り返し助言や支援や連帯を求められるようになった人が「自立した人間」と呼ばれるだけ

上二つ、「自分探し」にたいする批判

・「継続審議」と「両論併記」と「三方一両損」・・・これらが、代表的なリスクヘッジの技法です(p107)

・地縁的なものであれ、血縁の共同体であれ、複数の人間で構成される相互扶助組織を持っていないと、やっていけない・・・弱者が弱者であるのは孤立しているから(p238-239)

上二つ、「自己責任」に対するリスクヘッジについて

・高等教育で学んだもっとも重要な技法であるはずのコミュニケーション能力や問題解決能力・・・もっとも重要な「学ぶ能力」は、「能力を向上させる能力」というメタ能力です。(p188)

問題解決とコミュニケーション 一般について。反射的に対応するのでなく、いくつかのパターンに自覚的に落とし込めたら、と思う今日この頃。(今、この道具を使ってるんだな、と思えたらいいな)

・わからない情報を、「わからない情報」として維持し、それを時間をかけて噛み砕くという、「先送り」の能力が人間知性の際だった特徴なわけです(p28)

未解決の問題を頭に飼っておくのは、すごくしんどいことなんです。

最後の二つに関連して「認知療法を学ぶ会」に出た後の連想: 

刺激に対してすぐに反応するのでなく、認知を挟んで、その認知を適応的なものに修正しましょう、というのが認知療法。

脳の仕組みでいえば、感覚野から扁桃体などの情動脳へという回路に対して、高次脳からのコントロールを強化しましょう、と。行動療法を加えて認知行動療法となると、基底核を動員することになる。

高次脳は、現在の情報を(大脳に蓄えた)過去の情報に照らし合わせる。時間がかかるし、エネルギーもいる。パターンにはめて基底核がやってくれるとラク。

可塑性といえば、皮質(海馬、大脳)、小脳、基底核、扁桃体あたり。「身体性」を持ち込めば、小脳も動員できるか。

受験勉強していたとき、独自の方針として、頭は使わず手で解けるように、を目標にしていた。誰に教わったわけでもないと思うが。

前に拾ってきたこんな回路みたいなのが書けたらいいな。

4_2

ちなみに、冒頭に書いた患者さんにこの本を批判してもらおう、と思っていたのですが、いつの間にか仕事を見つけて退院されました。最後まで謎の人物でした。

|

« ストレスについて話してきました | トップページ | お金の運用の単純化 »

コメント

インデックスファンドのページからたどり着き、認知行動療法、復職支援のコメントを偶然拝読して、思わずワラにすがる思いで、コメントさせていただきましたが、
もし、不向きの内容でしたら、削除してください。


長男が、社会人になってから、まさかのトウレット障害と診断され、現在は主に強迫性障害で苦しみ、今年2月から休職しています。
大学病院の主治医(通院もキャンセルしたり、待合室で待ちきれず、帰ってきたりで、薬の服用も不規則です)の紹介で、原田先生のクリニックにも1~2回通いましたが、意味ない、効かないと辞めてしまいました。

薬は今までに色々変えて合うものを探している状態だと思うのですが、強迫行動(服破り、物壊し)はなかなか治まりません。


規則的な生活をするために、復職支援のメディカルケア虎ノ門のようなプログラムに、少し通い始めたらどうかと主治医から提案をいただいても、本人は無反応、現在は三度の食事以外は自室のベッドで寝たきりで、何をする気力もなく、体重も急激に太りました。


ただ、週末、夕方になると、背広を着て夜遊びに出かけます。
遊びにはいけるのだから、現実から逃げている登校(仕事場)拒否ではないかと腹立たしく考えてしまいます。

二十歳の頃まで優秀と期待され、プライドの強い子でした。自分の障害を受け入れることが出来ず、なぜ、オレが、、、、、みんなオマエら親のせいだと
暴れ、すっかり歪んで、心を閉ざしており、先生も誰も信用していないと言います。

主治医は本人が直そうという気になるまで、見守るしかないと仰います。やはり、じっと待つしかないのでしょうか?
この自暴自棄の生活のままで好転するとは考えられず、
長引くほど、精神状態が不安定になり、ますます社会復帰から離れていくのでは、、
不安と苦悩ばかりで、手立てもなく月日だけが過ぎました。

このように、本人に治療に対する前向きな気持ちがなく、聞く耳を持たないケースでは
皆様はどのように対処されているのでしょうか?


長々と申し訳ありません。

投稿: お手上げ、涙 | 2009年9月21日 (月) 14時09分

ご質問、ありがとうございました。

昨年度、家族を巻き込んでの強迫のケースが2回ありました(1回は主治医不在時の救急対応、もう1回は巻き込まれた家族のうつ状態)。いずれもいい智恵はなく、解決の方向に向かいませんでした。

今年になって、アルコール依存の対処と似ているのでは、と思うようになってきました。アルコール依存について家族向けの本もいろいろ出ているので、読んでみてはいかがでしょうか。一例として、「アルコール依存症―治療・回復の手引き (ホーム・メディカ安心ガイド)」(高木 敏, 猪野 亜朗 )を挙げます。

また、当事者・家族会に参加して、役に立つ知識を集めたり、同じ苦しみをもつ方々と交流すると、精神的に落ち着いて前向きな対処ができるようになるのでは、と思います。これもアルコールと同じです。

外堀から埋めていくような作業ですが、どうか気長にお願いします。

投稿: HZ | 2009年9月22日 (火) 12時59分

コメントをいただき、ありがとうございました。
アドバイスをいただき、感謝の気持ちで一杯です。

ひきこもって、日々、破壊される衣類や本、パソコン等、目の当たりにすると、本当に家族がウツになりそうです。

少しでも前向きになれるよう、さっそくご紹介いただいた本を読んでみたいと思います。

投稿: | 2009年9月23日 (水) 23時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ストレスについて話してきました | トップページ | お金の運用の単純化 »