文章を書くのに時間が掛かるのは?
子供が中学受験のため塾に通い始めてしばらくしてから、「二月の勝者」というドラマが始まりました。中学受験の塾を舞台に、さまざまな家庭とそれを支える塾関係者を描いたドラマです。独善的に見えるプロ塾講師が、実は子供の特徴をよく観察・把握し、的確な介入を行っている、というのがミソです。
中学受験つながりで、プロ家庭教師「ジュクコ」さんの人気ブログを見つけました。
https://ameblo.jp/jyukuko/
首都圏の受験事情が生々しく描かれています。
著書も出ています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4065251265?ascsubtag=p_7exOxuzVHz156aUSS0mai7&linkCode=ogi&psc=1&tag=amebablog_st1-22&th=1
ジュクコさんのブログで、読解力についての解説が新井紀子さんの「AIに負けない子供を育てる」を基にされていたので、「AIに・・・」も購入しました。
「AIに・・・」の核となっているのは、AIの読解力を評価するために作成された「リーディングスキルテスト(RST)」が、実は人間の読解力の評価にも非常に有効であるという主張です。
RSTでは、「事実について書かれた短文を正確に読むスキル」を6分野に分類して、テストを設計しています。
・係り受け解析:文の基本構造を把握する力
・照応解決:指示代名詞が指すものや、省略された主語や目的語を把握する力
・同義文判定:2文の意味が同一であるかどうかを正しく判定する力
・推論:小学6年生までに学校で習う基本的な知識と日常生活から得られる常識を動員して文の意味を理解する力
・イメージ同定:文章を図やグラフと比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力
・具体例同定:言葉の定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力
体験版をやってみると、子供から話しかけられながらぼーっとした頭でやったせいか(言い訳;)、けっこう間違いがありました。
驚くべきことに、高校のRST能力値の平均とその高校の偏差値には極めて高い相関があったとのことです。その理由として、教科書を読んで正しく理解するにはRSTが評価するスキルが必要だから、とされています。
と、ここまでが長い前置きで・・・
私は文章を書くのに非常に時間がかかるという悩みを抱えています。語彙の少なさも問題ですが(これは日本語版シソーラスでかなり解消しました)、ここで挙げられている6つのスキルがスムーズに運用できない、ということに気づきました。
それが課題として明瞭になるのが英文和訳です。主語は英語では必須ですが、日本語では省略可能です。また、長い関係詞節を自然な日本語にするには、語順を工夫する必要があります。そこで順番を入れ替えると、指示代名詞を置き換える必要があります。訳した文章と元の文章の意味がズレていないか検証する必要があります。こんなふうに、「英文和訳」というのは日本語の国語力が大いに試されるのです。
英文和訳と同様のことが、自分の頭の中にあるアイデアを文章にする時に問題になります。ここ2,3年ほど日本語で論文を書いており、ずっとこの作業に苦労しています。
こうした能力を伸ばすには、おそらく、じっくり読むトレーニングをすることと、日々の書き物を丁寧にすることしかないでしょう。かつて精神科ではいわゆる「古典」の原書を訳しながら精読するという慣習がありましたが、今や完全に廃れてしまいました。書いた文章に対して最も厳しい批判を受ける場面は鑑定と博士論文でしょうが、鑑定をする精神科医は一握りですし(私もしません)、「博士論文は英語で」という大学院が多く日本語で論文を書く機会は減っているようです。ただ、「本当にクリティカルに考えるには、母語でないと難しい」と私は感じています。
これから日本語で読む書きをするときは、上の6つのスキルを意識しようと思いました。
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