2009年11月13日 (金)

簿記の勉強

ここ数回、認知行動療法のエントリが多かったのですが、実は主に取り組んでいたのは簿記3級の試験に向けての勉強でした。試験は11月15日でまだなのですが、3回の過去問で合格点をクリアできていたので、いちおうクリアしたと自分の中では思っています。

発想は単純で、何をするにしてもお金の動き方を知らないと始まらない、それなら一番の基本から、という考えで、今年の(唯一の)目標として挙げていました。

9月初旬から開始して2ヶ月間、テキストと問題集をコツコツやっていました。ゼロから「掛け」とか「為替」とか数十個の勘定の意味を覚え、文字通り手を動かしながら勘定の動かし方を覚えたのでした。感じとしては、中学入試の算数に似ている気がします。

「一番、簡単な試験だから」と高を括っていたのですが、どっこい意外と手強くて、マスターするまでイライラしました。できるようになると、複式簿記の仕組みがなんとなく見えてきました。「人間が生んだ最も偉大な発明の一つ」という言葉はまだまだピンと来ませんが。

簿記2級だと工業簿記も含むのでやる気はありませんが、財務諸表を読めるようになること、多少は経営分析もできるようになること、を目指したいと思います。大変そうですが。。。

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2009年10月16日 (金)

認知&行動療法学会の報告

学会に行ってきました。出張報告を書いたので、そのままアップします。

9回日本認知療法学会・第35回日本行動療法学会 (2009101112日 幕張メッセ)

1)なぜこの学会に参加したのか?

 うつ病や神経症は、薬物療法だけでは効果が不十分だったり、再発を防ぐためには服薬を続けなければ再燃・再発するケースが多いことを、普段の診療で実感している。

 うつ病や神経症に対して最もエビデンスがある心理療法は認知行動療法(CBT)であるため、私は今年度から勉強会や研修会に参加し始めている。その一環として、共同開催された上記の学会に参加することを決めた。

2)参加したプログラムについて

a) シンポジウム 「認知行動療法を日本に普及するにはどうすれば良いのか?英国のモデルから」

英国では、CBTは薬物療法とならぶ有効な治療法と認められている(その一部は今年のNHKでも放送されていた)。英国におけるCBTの現状、およびそれを参考にした日本での取り組みが紹介された。

サルコフスキス氏は英国におけるCBTの現状を報告された。エビデンスを集め、予算を獲得し、心理士を養成するシステムを作り、さらにエビデンスを集める、というシステマティックな取り組みを紹介された。また、CBTの経済的な治療対効果をはっきり数字で紹介されていた。”In the end, money drives everything.”という言葉が印象的であった。

大野裕氏からは、CBTを日本の医療現場へ導入する試みが報告された。エビデンス、診療報酬化、トレーニングについて具体的な話をされた。日本では臨床心理士が国家資格となっていないため、最初は医師による治療となるとの見通しであった。研修案はかなり具体的であり、ぜひ早めに情報をキャッチし研修を受けたい。

b) ミート・ザ・エキスパート 遊佐安一郎先生

 臨床心理士として、アメリカおよび日本の精神病院で活躍されてきた先生である。患者さんに寄り添うことの大事さ、患者さんをシステム(家族システム、治療システム、身体システム、など)の中で捉える視点を紹介された。システムの中でCBTは心理システムの意識的な領域に働きかけるものであるとされ、それ以外のシステムに働きかけるものとして、精神分析、家族療法、DBTなどにも言及された。

 エビデンスも大事だが、良くなる人が半分ということは、良くならない人も半分いるということであり、良くならない方にはいろんなアプローチが必要である、というお話もあり、種々の手法を学ぶ大切さを感じた。

c) ミート・ザ・エキスパート 原井宏明先生 「行動・認知療法とパフォーマンスマネージメント」

 強迫性障害の行動療法の日本での第一人者である。座長の先生も巻き込んで、非常に挑発的な内容であった。

 10年以上に渡るご自身の治療成績(治療した人数、改善度、治療期間)、および取り入れてきた手法を紹介された。基本はY-BOCSによる評価と曝露反応妨害法であり、効率よくするために動機付け面接、ACTなど取り入れてこられた。

 入り口(診断、重症度の判定)、出口(アウトカムの判定、外部のベンチマークとの比較)はぶれない、という姿勢は、普段、そういうことをあまり意識せず臨床を行っているものとしては反省させられた。自分が行ったことを記録し、データとして残す必要を強く感じた。

d) シンポジウム “CBT for psychosis”

 統合失調症の陽性症状・認知機能低下に対するアプローチとしてCBTを取り入れる試みが紹介された。これまでの取り組みをCBT的に捉え治すという程度で、残念ながら興味は持てなかった。

e) ケーススタディ 太田滋春先生 「CBTを軸としたストレス性疾患専門治療デイケアの試み」 

 札幌にある中江病院の心理士の方によるデイケアの試みである。通常、CBT1対1で、週11時間程度の面接という枠組みであるが、それをデイケアに拡張することで、グループで、なおかつホームワークを実践する時間と場の提供を期待している。復職デイケアよりも重度の感情障害を対象にしているという。

 週1回、午前中はグループでCBT、午後はOTをしながらCBTも交えていく、といプログラムである。心理療法とOTの(意識した)コラボレーションという面白い取り組みであり、また、漫然と続けるのでなく、アセスメントをしながら改善を試みておられる様子がうかがえた。

3)全体の感想

a) 本で読むよりも生の声を聞いた方が圧倒的に印象に残り、次につなげていこうというモチベーションとなった。

b) CBTはもちろん、それ以外の心理療法もたくさん言及されており、興味が広がった。

c) 自分が行っている診療を振り返り、客観視するために、面倒ではあるが、評価尺度を使う、データを整理する、症例報告を書く、などの必要性を感じた。

d) やはりCBTは有力な手法である。少しずつ始めており、勉強会でスーパーバイズを受けたり、研修会に参加したりして身につけていきたい。

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2009年5月22日 (金)

精神科の達人---神田橋條治先生の講演

神田橋條治先生は、日本の精神科医では知らない者がいないくらい有名な先生です。精神科診断面接のコツ(追補)、 精神療法面接のコツ、精神科養生のコツ の「コツ三部作」は非常に有名で、臨床で使える精神療法としてよく読まれています。

昨晩の当直でwebで神田橋先生の講演録を見つけました。医局でも探したのですが、この号だけ見つかりませんでした(笑)

最近、先生は双極性感情障害(躁うつ病)、PTSDについて講演されており、それに続く第三弾として発達障害のお話です。いずれも見過ごされることが多く、いわゆる「難治例」として扱われるものです。前二者も面白く、今回のも非常に興味深かったです。

特に興味深いのは、発達障害の病因として、前頭葉に加えて小脳が大事でないか、という点です。発達障害の人は不器用であること、体を使ったトレーニングにより症状が改善すること、を傍証として挙げられています。

精神科医が小脳について考えることはまずないので、そういう発想が出てくるのがすごいと思います。

小脳は学習理論が有名ですが、高次認知機能に関わっているのでないか、という話が徐々にでてきています。10年くらい前に川人光男先生の講演を聴いたとき、(充分に理解したとはいいがたいものの)非常に面白く思いました。

小脳であれば薬はあまり効かないだろう、むしろ運動を中心とした学習・トレーニングが大事になってくるだろう、と思いますね。

先生は「邪気が見える」とか「Oリング」というオカルト的な表現をされていますが、おそらく個々の患者さんの表情、雰囲気、服装、などの限られた情報を、バックグランドにある莫大な知識と経験と照らし合わせると、勝手にアイデアが出てくるのだと推察します。

凡人としては、そのギャップを地道に文献で埋めていくしかないのかな、でも、それをきっちりやっていけば新たなアイデアがどんどん出てくるだろうし、clinical neuroscientistとして相当のレベルに行けるのかな、と思います。

あと、質疑応答での先生のコメント

「全体主義的になると研究者のほうに行きまして、個性的になると治療者のほうに行きます」

はすごい的確ですね。その軸のどのあたりに自分がいるか、どちらを指向しているか、意識したいと思います。

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2009年5月13日 (水)

薬理学と、in vivoの電気生理の実験と

精神科の治療の大きなウェイトを占めるのが薬物療法です。

どの受容体に作用するかはわりと分かっているのですが、実際に脳のどの領域で、どんな効き方をしているから目的の効果を得られるのか、というメカニズムは充分に分かっているわけではありません。

現場では「この薬をこれくらい処方したらこんな効果があった」という経験の積み重ねで主にやっています。もちろんそれで上手くいけば問題ないのですが、上手くいかなかったときにいかにトラブルシューティングするか、その精度を上げるためにはやはり薬理学な知識・理解が必要だな、とあらためて感じてきた今日この頃です。

薬を入れるというインプットと、気分とか行動とかが変わるというアウトプットの間には大きなギャップがあります。その間をイメージする大きな助けとなっているのは、5年ほど前にやっていたin vivo(生きている動物)の電気生理の実験です。

マウスに麻酔をかけ、脳に電極を刺し、一個一個の神経細胞の活動を測定していました。バルビツレート麻酔で眠らせると大脳皮質の細胞はシーンと静まりかえっており、麻酔が切れてくると神経細胞が徐々に活動するようになってきます。麻酔が切れてマウスがバタバタするようになると、また麻酔を足して、というふうに、意識レベルと脳の活動を並行して観察していたことは貴重な経験であり、それこそが生理学の醍醐味だと思います。

そのときはマウスの気管切開をしたり、脳を傷つけないように薄い頭蓋骨を剥がしたり、皮膚を縫合したり、とミニミニサイズの外科手術を毎日のようにやっていました。

私自身は経験ないのですが、同じ研究室にはネコの電気生理の装置もあり、人工呼吸器をつけながら3日間、交代で記録を取り続けていたこともあったそうです。

病院で一人当直をするようになり、救命処置、特に挿管できるなければ、と感じ、そろそろ他の病院の麻酔・救急に週1回習いに行こうと思っています。それもあって、マウスに麻酔をかけていろいろ処置をしていたころのことを思い出しました。

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2007年3月23日 (金)

総説を書きました

前回の記事で書いた頼まれていた総説を書き上げました。原稿用紙20枚とそんなに多くないと思っていたのですが、いざ書いてみるとなかなか大変で、丸1ヶ月かかってしまいました。で、その内容は。。。

「plasticity_in_psychiatry.doc」をダウンロード

「fig1.pdf」をダウンロード 「fig2.pdf」をダウンロード 「fig3.pdf」をダウンロード 「fig4.pdf」をダウンロード

なんか、「精神医学入門」にしてはずいぶん難しいことを書いてしまった気がします。でもその分、プロに読んでもらっても新たな発見があるかもしれません。精神医学と神経可塑性というのは、つながりがありそうで案外これまで書かれてないので、ちょっと強引なことも書いちゃっていいのかな?

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2007年2月16日 (金)

総説を書きます!

私は長年、研究をやっていた割にほとんど論文を書いておらず、ましてや総説など考えたこともなかったのですが、今日、マイナーな雑誌ですが総説を書くよう依頼され、ありがたく引き受けることにしました。

与えられた仮題が「神経可塑性からみた精神疾患の成り立ち」とまあ、大きく来ましたね!私みたいな小心者には大それたお題ですが、理解していないことを書くわけにはいかないので、以前、研究していた「カンナビノイド」という物質から見た神経可塑性と精神疾患について書くことにしました。

カンナビノイドは大麻に含まれている成分で、当然、薬物依存に関係しています。ところがそれだけでなく、脳自身がカンナビノイドを作り出し、巧みに利用していることが分かってきました。特に、神経回路の再編成(=神経可塑性)に重要な役割を果たしているようです。

カンナビノイドは統合失調症やてんかんなどの発症に関係しているらしい、という証拠が出てきています。カンナビノイド-神経可塑性という軸から、こうした精神疾患を解明していきましょう、というのが主旨の予定です。

まあ、せっかくの機会なので、本業に差し障らない範囲で一生懸命やってみます。

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2007年2月 8日 (木)

発達障害の勉強会

2月3日(土)に明治製菓の主催の勉強会に行ってきました。(明治製菓はデプロメールの製造元です)

講師は京大保健学科の十一元三先生で、近年話題となっている児童精神医学、特に発達障害のお話でした。ここのところ、発達障害の入院がけっこうあったので、興味深く聞けました。

発達障害の重い順に並べると、自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)となります。この中で自閉症は児童健診などで早めに分かりますから、臨床的に問題となるのはアスペルガーとPDD-NOSとなります。

発達障害の診断的特徴としては、DSM-IVによると次の2つが統計的に有意だそうです。

1)対人相互反応性=人・集団と相互作用・共鳴しながら精神発達する能力 の障害

非言語的コミュニケーション、仲間関係、興味や共感の共有を求めない

その例として、視線の話(eye contact, presenting, pointing, gaze following)をされていました。

2)同一事物への強迫的な限局・反復

規則の過剰遵守、字義通り性、整合性を強く求める

 その他の特徴として

3)早期関連症状(どれかに当てはまることが多い)

・緊張・情動制御の問題:パニック(最多)、freezing

・注意転動性・多動性:年齢と共に改善

・感覚・知覚・運動:知覚過敏、協調運動の拙劣

4)ユニークな興味

「理科実験」が好き。京大の教官にも多い(笑)、例としてタリウムを母親に飲ませていた女子高生

 

合併する症状として

・精神病様症状が出ることも:被害関係念慮(最多)、幻聴、幻視

・うつ状態(一貫性のなさ・スイッチしやすい):独自の認知様式、強迫性との抵触、いじめ・疎外、対人的不適応の自覚

・強迫性障害

・解離症状

この中でも被害妄想と幻聴は統合失調症との鑑別で大きな問題となります。実際、「統合失調症」として治療されている広汎性発達障害の人も多いと思います。実際、鑑別の難しい例を経験しましたし、今後は抗精神病薬の使用を慎重にしないといけないな、と感じさせられました。

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2006年8月 2日 (水)

アンソニー・グレイスのセミナー

Anthony Graceのセミナーを聞きに行ってきました。実物はどこかのホームページで見たとおりのいいおっさんて感じ。

イントロは、普通のネコの絵が統合失調症の患者さんにはどんなにまがまがしく見えるかというイメージの絵を出したり(幻覚)、「ラジオチップを埋め込まれたから取り出す手術ができる病院を紹介してほしい」というメール(妄想)を紹介したり。

本題は、扁桃体への入力(prefronatal cortex, association cortex、海馬?)、側座核への入力、ドーパミンの関与など、これまでの仕事を1論文あたり1枚のシェーマと1個のデータで説明するような感じ。サマリーをつけてくれるも、読み終わらないうちに次のスライドにいくようなペースで、なかなかメモも取れませんでした。

結論として、prefronatal cortex, amygdala, hippocampus, nucleus accumbensなどが織りなすネットワークの随所随所でドーパミンが重要な制御をしており、統合失調症ではこのネットワークが破綻を来している、ということでした。

比較的新しい話であるネットワークについて(特に扁桃体関連)は詳しく述べていましたが、ドーパミンにはあまり重点が置かれていませんでした。ネットワークの話は面白いもののやや不慣れのため、完全にはついていけなかったのが残念です。ゆっくり考えれば納得いくでしょうが。とはいえ、これだけの膨大なデータをまとめ上げていく力はすごいです。

個人的には、棒グラフのきれいなデータを見せられてもin vivoの実験の難しさ・微妙さ・泥臭さを知っているので、自分でやってみる気はしませんでした。誰かが面白い実験をやってくれたら、それをヒントに治療を工夫するのが今の自分に合っているようです。

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2006年7月22日 (土)

和音の幾何学

Pooneilさんのブログで和音の構造について面白い記事がありました。詳しい説明はそちらに譲るとして、和音を構成する単音をダイアグラムで表示すると、ドーナツ様の構造(トーラス)を取るということです。さらに、いかにしてコード進行をつくったりいじったりするか書かれていて、コードをほとんど忘れてしまったので十分理解はできていないものの、なんとなく音楽理論のイロハが分かったような気がしました。

この記事を読んで、高校生の時に大学への数学の「宿題」コーナーでトーラスの問題を解いたときのこと、大学生の時にギターを習っていたことを思い出し、みんなつながっているんや!と感慨を覚えました。

つながっているといえば、私が興味を持ってやってきたことを順に見てみると、数学(高校生)→分子生物学(大学生、大学院前半)→脳科学(大学院後半、ポスドク)→精神医学(現在)というふうに、連続しつつも一貫して複雑な対象にシフトしているのに気がつきました。次はどうなるんでしょうか?

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