学会に行ってきました。出張報告を書いたので、そのままアップします。
第9回日本認知療法学会・第35回日本行動療法学会 (2009年10月11~12日 幕張メッセ)
1)なぜこの学会に参加したのか?
うつ病や神経症は、薬物療法だけでは効果が不十分だったり、再発を防ぐためには服薬を続けなければ再燃・再発するケースが多いことを、普段の診療で実感している。
うつ病や神経症に対して最もエビデンスがある心理療法は認知行動療法(CBT)であるため、私は今年度から勉強会や研修会に参加し始めている。その一環として、共同開催された上記の学会に参加することを決めた。
2)参加したプログラムについて
a) シンポジウム 「認知行動療法を日本に普及するにはどうすれば良いのか?英国のモデルから」
英国では、CBTは薬物療法とならぶ有効な治療法と認められている(その一部は今年のNHKでも放送されていた)。英国におけるCBTの現状、およびそれを参考にした日本での取り組みが紹介された。
サルコフスキス氏は英国におけるCBTの現状を報告された。エビデンスを集め、予算を獲得し、心理士を養成するシステムを作り、さらにエビデンスを集める、というシステマティックな取り組みを紹介された。また、CBTの経済的な治療対効果をはっきり数字で紹介されていた。”In the end, money drives everything.”という言葉が印象的であった。
大野裕氏からは、CBTを日本の医療現場へ導入する試みが報告された。エビデンス、診療報酬化、トレーニングについて具体的な話をされた。日本では臨床心理士が国家資格となっていないため、最初は医師による治療となるとの見通しであった。研修案はかなり具体的であり、ぜひ早めに情報をキャッチし研修を受けたい。
b) ミート・ザ・エキスパート 遊佐安一郎先生
臨床心理士として、アメリカおよび日本の精神病院で活躍されてきた先生である。患者さんに寄り添うことの大事さ、患者さんをシステム(家族システム、治療システム、身体システム、など)の中で捉える視点を紹介された。システムの中でCBTは心理システムの意識的な領域に働きかけるものであるとされ、それ以外のシステムに働きかけるものとして、精神分析、家族療法、DBTなどにも言及された。
エビデンスも大事だが、良くなる人が半分ということは、良くならない人も半分いるということであり、良くならない方にはいろんなアプローチが必要である、というお話もあり、種々の手法を学ぶ大切さを感じた。
c) ミート・ザ・エキスパート 原井宏明先生 「行動・認知療法とパフォーマンスマネージメント」
強迫性障害の行動療法の日本での第一人者である。座長の先生も巻き込んで、非常に挑発的な内容であった。
10年以上に渡るご自身の治療成績(治療した人数、改善度、治療期間)、および取り入れてきた手法を紹介された。基本はY-BOCSによる評価と曝露反応妨害法であり、効率よくするために動機付け面接、ACTなど取り入れてこられた。
入り口(診断、重症度の判定)、出口(アウトカムの判定、外部のベンチマークとの比較)はぶれない、という姿勢は、普段、そういうことをあまり意識せず臨床を行っているものとしては反省させられた。自分が行ったことを記録し、データとして残す必要を強く感じた。
d) シンポジウム “CBT for psychosis”
統合失調症の陽性症状・認知機能低下に対するアプローチとしてCBTを取り入れる試みが紹介された。これまでの取り組みをCBT的に捉え治すという程度で、残念ながら興味は持てなかった。
e) ケーススタディ 太田滋春先生 「CBTを軸としたストレス性疾患専門治療デイケアの試み」
札幌にある中江病院の心理士の方によるデイケアの試みである。通常、CBTは1対1で、週1回1時間程度の面接という枠組みであるが、それをデイケアに拡張することで、グループで、なおかつホームワークを実践する時間と場の提供を期待している。復職デイケアよりも重度の感情障害を対象にしているという。
週1回、午前中はグループでCBT、午後はOTをしながらCBTも交えていく、といプログラムである。心理療法とOTの(意識した)コラボレーションという面白い取り組みであり、また、漫然と続けるのでなく、アセスメントをしながら改善を試みておられる様子がうかがえた。
3)全体の感想
a) 本で読むよりも生の声を聞いた方が圧倒的に印象に残り、次につなげていこうというモチベーションとなった。
b) CBTはもちろん、それ以外の心理療法もたくさん言及されており、興味が広がった。
c) 自分が行っている診療を振り返り、客観視するために、面倒ではあるが、評価尺度を使う、データを整理する、症例報告を書く、などの必要性を感じた。
d) やはりCBTは有力な手法である。少しずつ始めており、勉強会でスーパーバイズを受けたり、研修会に参加したりして身につけていきたい。
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